三樂だよりmagazine
アートビオトープ那須 art biotope
レポート 2020.07.17
自然と感性が交わる、創造の小さな庭
アートビオトープ那須HPはこちら
https://www.artbiotop.jp
「二期倶楽部」は2006年栃木県那須町横沢地区でカルチャーリゾートをオープン。
本格的なテラス・陶芸スタジオを併設した長期滞在型レジデンス(邸宅)です。
那須連峰の山麓、標高550mの中山間地域に位置し
火山灰土壌の中でも水の豊かな場所として郷土誌に記されています。
水庭 ”Water Garden”
7月1日(水)14:00からの「水庭ツアー」に参加しました。
天気は雨。梅雨時の真っただ中。
受付を済ませた後、雨の日の森の香りを感じながら
今日に至る迄の歴史を聞かせていただきました。
その後は自由散策。
160の池はサイフォンの原理を利用した配管でつながれている。
池をつなぐパイプに流れる水音や雨粒が作る波紋がリズミカルで
さながら自然が創るオーケストラといった感じでしょうか。
水庭の敷地は雑木が生い茂る里山で、先人達が切り開き水田とし
その後、牧草地として利用されていたようです。
300本を超える雑木を1本1本移植された。
機械(バックホー)で立っている樹をそのまま掘り上げ、隣の土地に抱え運び移植する。
移植できるのは一日に4本程度で構想から完成まで4年の歳月がかかりました。
造園施工:櫻井敦氏/静岡グリーンサービス
植物・昆虫・動物が複雑に絡み合い
水辺はさながら生態系の宇宙のようです。
苔と木と水…
もともとここに存在していたもの
再び、人の手によってデザインされた「水庭」…
造園設計:石上純也氏/石上純也建築設計事務所
318本の樹木は全て落葉樹。
コナラ、イヌシデ、アカシデ、ブナ、ヤマザクラ、カエデ
樹高は14〜15m
池と木の位置に空間が生まれる。
水の循環についてブックレットには鴨長明が「方丈記」で
「行く川の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず」と述べたような
水の流れに生命の姿を重ねてきた、日本古来の思想にも通ずると記されています。
人の手に依って緻密につくられた自然空間の中に一時間余りいました。
点の雨、線の雨、雨音、鳥のさえずり、微風、樹皮、おたまじゃくしの動き…
人がいた。人がいなくなった。
静寂だけど生きている。
時が流れている。
奥の林から手前の川に橋をかけて
318本の樹々を移動した(昨日迄、橋があったそうです)
このアスファルト舗装もゲストとしては初めて通る私。
文献引用 発行
ボタニカルガーデン アートビオトープ アートビオトープ那須
庭NIWA 233 2018 冬 建築資料研究社
参考
「庭」233「水庭」の文中にあるフランス人造園家ジル・クレマン氏の「動いている庭」という映画(思想)も大変興味深かったです。
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文章・写真: 三樂編集部