三樂文庫
古都
2021.05.24
京都の四季、年中行事、町並み、情景、風景、風土が描かれている。
この小説の書き出しはこうだ。
〜もみじの古木の幹に、すみれの花がひらいたのを、千恵子は見つけた。〜
その様の想像を掻き立てる。
「京ことば」の会話が多く、言葉一つ一つをなぞりながら読んでいく。
京の町と北山杉の里を舞台にそれぞれに育った双生児の千恵子と苗子の物語。
この書は、2011年8月20日「JAG10周年記念フォーラム」のシンポジウムで
塚本由晴氏が「山の音」とともに紹介された。
〜あるいは庭の話をよくするんです。庭のイチョウのこととか、梅の木の途中に
くぼみが2箇所あるのを知っているとか、何かそういうことが娘の出生に関わることや
うまくいかない結婚に関わることなど、重苦しい話題の合間に同じくらいの割合で、
挿入されているんです。〜
明治から昭和の名だたる文豪たちの書には、いつも身近に植物が描写され、
このように物語の伏線を担っていたり、『風情』『情景』をより一層、醸し出していく。
そのような描写は「文学」をより「日本文学」に仕立てる要素が満載である。
古都
- 三樂文庫No:025
- 著者:川端康成
- 出版社:新潮社
- 発行日:昭和43年8月25日
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文章・写真: 三樂編集部