三樂文庫
樹木たちの知られざる生活
2023.02.26
サブタイトルは、「森林管理者が聴いた森の声」
動物のように動かず、声を出さないため、物扱いされることもある樹木。
しかし、樹木には驚くべき能力と社会性があるのだ。
子どもを教育し、コミュニケーションを交わし、時に助け合う。
その一方で熾烈な縄張り争いをも繰り広げる。
音に反応し、数をかぞえ、長い時間をかけて移動さえする。
p270
「有機林業?」より
スイスの憲法には「動物、植物、および他の生体を扱うときには、
その生き物の尊厳を尊重しなければならない」と記されている。
これを守るなら、道端に咲く花を意味もなく摘むことは許されない。
世界のほかの国の人々からは、このような考えはあまり理解されないかもしれないが、
私個人としては、動物と植物の両者を隔てなく道徳的に扱うべきだという考えに賛成できる。
植物の能力や感情、あるいは望みなどがよりよくわかるようになれば、
彼らとの付き合い方が少しづつ変化するのは当然だろう。
森は、たまたま無数の生き物に生活空間を提供しているだけの木材工場でも資源庫でもない。
事実はその逆だ。
適切な条件で育つことができてはじめて、森林の樹木は安全と安心という木材の供給以上の
役割を果たしてくれる。
欧州には残されていない(失われた)
「里山」という文化が日本にはある。
このような視点にたつひとがひとりでも多くなれば、
「里山」は世界の共通語になると思う。
- 三樂文庫No:099
- 著者:ペーター・ヴォールレーベン 訳者:長谷川 圭
- 出版社:早川書房
- 発行日:2018年11月15日
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文章・写真: 三樂編集部