三樂文庫
モラエスの日本随想記 徳島の盆踊り
2023.09.27
私の好きな蒼い眼の方々(ラフカディオ・ハーン、ドナルド・キーン、C・W・ニコル、イサム・ノグチ)は、
それぞれにその時代の日本を知り、日本を愛した。
モラエスもそのひとり。
大正初期、徳島で暮らした「け・とーじん」さんの随筆。
随筆文学について
徳島について
身辺について
死をめぐる日本文化について
死について
そして、徳島日記…
どれも、興味深さとその意味について好意を持って語られている。
28 家の内部 より
中略
それに庭がひとつ、というよりも複数ある。というのも、この家には前面に木がたった一本−––樫–––と
先に触れた類の石がひとつあるきわめて狭い小さな庭があり、背後にせせこましいとはいえ、
とにかく一本の樹木とたくさんの灌木の植っている、庭と呼ぶによりふさわしいもうひとつの小庭があるからだ。
そして、この庭が祝福されんことを。
この庭があればこそ、雑草を抜き、箒き、水をまく日々の労働のうちに、
花が咲き、虫がやって来て空間を飛び交う喜びのうちに、
私は徳島でいちばん楽しい時間をすごすことができるのだ。
つまり、この随想記の冒頭に触れた日本の隠者、長明の質素な小屋とはまったく異なる宮殿に
私は住んでいるというわけだ。…
さて、本の題名にある
「ぼん・おどり」を、今改めて先祖を供養するおどりと解釈する。
恥ずかしながらその意味を意識することなく過ごして来てしまった。
母から聞いた話だが、
私の住んでいる地域では初盆の家の供養に「大念仏」という風習があるらしい。
この秋、眉山やモラエスゆかりの徳島に行ってみることにする。
- 三樂文庫No:122
- 著者:W.de モラエス 岡村多希子 訳
- 出版社:講談社
- 発行日:1998年1月10日
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文章・写真: 三樂編集部