三樂文庫
日本の色辞典
2021.06.07
江戸時代から続く染め屋5代目の吉岡幸雄氏による「日本の色辞典」です。
色をあらわす材料には、土に含まれる金属酸化物、または硫化物と植物に由来する染料がある。
色は自然界から生まれ、人の手によって新たな「色」となって生活、暮らしに潤いを与え、
時折、深い「美しさ」を感じさせる。
著者の「はじめに」から文を抜粋引用させて頂く。
〜〜〜季節を待って咲く花に、土にあって深くのびている根に、枝に実る果実に、
さらには樹皮の内側の肌に、と、ひそんでいる自然界の色素を汲み出すようにして、
糸や布や紙を染めることを、私は生業としている。〜〜〜
〜〜〜たとえば朝、太陽を拝する。その光に照らし出された山や野の万緑が輝き、
海や川の水は天を映して碧く澄む。季の花が鮮やかな彩りを添える。
そうした自然界の一瞬の姿、花のひとひら、風に揺れる枝葉の表裏に、
木の実の色と形に、人々は魅せられて、それらにゆかしい名をつけるようになっていった。
とりわけ、ユーラシア大陸の東の大海にうかぶわが列島の自然は、
寒暑日ごとにけしきの色をゆるやかに変えていく。人々はその色彩の変容を
瞬時にとらえて、色名を冠し、歌に詠み、文に託し、衣に纏うようになってきた。
こうしたことは、万葉の頃に始まり、王朝の貴人たちに育まれ、武家のたしなみとなり、
江戸の庶民にまでも受け継がれてきた日本人の魂である。
これが日本の伝統色である。〜〜〜
- 三樂文庫No:027
- 著者:吉岡幸雄
- 出版社:紫紅社
- 発行日:2000年6月20日
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文章・写真: 三樂編集部