三樂文庫
山の音
2021.06.28
戦後の家族の物語です。
主人公は私と同じ年頃だが時代設定(多分、昭和20年後半から30年前半)が違う。
主人公夫妻と息子夫婦、出戻りの娘とその子供ふたり。
現代と比較すれば随分にぎやかな大家族。
その一人ひとりの問題が家族を巻き込んでいく。
時代設定だけでなく環境もかなり違う。
鎌倉に住むいわゆるお金持ちの家庭だ。
「都の苑」の章では、京都の「瓢亭」が会話の中に出てくる。
娘の房子が「へちま亭」と茶化している。
また、電話の取次音にショパンの組曲「レ・シルフィード」が流れる。
小説はあくまで小説で、自分が育った頃とさほど時間差は無いのに
その内容(問題)は、大きく違う。
日本に「家」という社会が存在していた頃(家制度)の小説と捉え、
敗戦後の復興を知る世代の共感を得る作品だと思う。
山の音
- 三樂文庫No:030
- 著者:川端康成
- 出版社:新潮社
- 発行日:昭和32年4月15日
この記事をシェアする
文章・写真: 三樂編集部