三樂文庫
どうぞ蚊帳の中へ 21世紀によみがえる不思議空間
2021.07.05
2007年、この蚊帳の取り扱いについてお話を伺いに静岡県磐田市の「菊屋」さんを訪問した。
代表の三浦氏に「蚊帳」について丁寧に説明を頂いた。
私も記憶には無いが生まれた頃は「蚊帳」を利用していたかもしれない。
多分その頃から蚊帳は自然消滅し、今蚊帳を使ったことのある人は僅かになっているでしょう。
それは、戦後の住宅事情の変化にほかならない。
木造住宅構造に加え、曖昧な内と外(土間や縁側、障子、壁、天井)で寒暖の範囲が
現代に比較して広く、家全体が呼吸しているすみかのようであった。
蚊に限らず大なり小なりの生き物もたまに見かけた昭和戦後までの家々。
その後、住宅は一変する。
建材も設備機器も格段に進化?し、外部を遮断することによって
温度、湿度、光を調整し、全館空調を達成する。
その数値的快適感は病みつきになり、いつしか人は自然界から遠ざかってしまっている気がする。
自分がそうだ。
眠っている間、蚊から守られて安眠を獲得できる「蚊帳」は、その虫除け機能にとどまらず、
人をそっと守るような懐の深いその形、透けた感じ、
麻で出来た質感は夏でも涼しさを生みそうだ。
いつか
蚊帳が似合う家に暮らしてみたい。
蚊帳が似合う家を建ててみたい。
どうぞ蚊帳の中へ 21世紀によみがえる不思議空間
- 三樂文庫No:031
- 著者:三島おさむ
- 出版社:本の風景社
- 発行日:2003年5月2日
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文章・写真: 三樂編集部