三樂文庫
スレブレニツァ −あるジェノサイドをめぐる考察−
2021.08.23
長 有紀枝氏を新聞の記事(あすへの考)で知りました。
NGO「難民を助ける会」の会長職を務められ、NGO(非政府組織)が抱える問題、もどかしさを説明されています。
日本の場合、自然災害の被災者には寄付金は集まるが、紛争地の被災者支援になると苦労すると、自身にも思い当たる節がある。
興味深い新聞紙面の「国際面」には、
毎日、国際紛争や貧困、難民の記事は絶えない。
地球のあちこちで起きている筆舌に尽くし難い事象とその最たる『集団虐殺』は、長氏のこの「スレブレニツァ」で深く研究されている。
スレブレニツァは旧ユーゴスラビア、民族と文明の十字路と呼ばれるバルカン半島に位置する小さな町。
第一次世界大戦の引き金となった「ハプスブルク家」のオーストリア皇太子夫妻がセルビア人青年により暗殺されたあたりからユーゴスラビア内(6カ国、5民族、4言語、3宗教、2文字)の紛争は続いた。
ユーゴスラビア紛争、クロアチア紛争、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、コソボ紛争、マケドニア・アルバニア紛争が起こった。
1995年におきたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で小さな町「スレブレニツァ」でセルビア人によりムスリム人男性7,000人以上が集団虐殺=ジェノサイドされた。
ジェノサイドの目的は複合的で「民族浄化」「復讐」「想定外事象への対処」等が挙げられているが、その他の背景に「日常からの連続性」を指摘している。
日常的な「人種間での蔑視」がそれである。
現代でも世界のあちこちでこのようなことがきっかけで悲惨な事件が起きている。
東アフリカの「ルワンダ」、「ダルフール」(スーダン)でもそれぞれ異なるジェノサイドが行われ、その事例が紹介されている。
部族同士のルワンダ・ジェノサイドは規模(107万人以上)の大きさと残虐性が突出している。
また、アラブ系イスラム教徒が主流のスーダンと黒人キリスト教、数十の民族を抱える多民族国家南スーダンが分離独立するまでにジェノサイドが行われ、その後多くの難民が産まれ、「世界最大の人道危機」につながった。
今年、独立10年だが内戦の傷は深く、今もなお国民の3割が先が見えない不安な避難生活を送っている。
これからも新聞紙上からでもより関心を持つことにしよう。
- 三樂文庫No:038
- 著者:長 有紀枝
- 出版社:東信堂
- 発行日:2009年1月30日
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文章・写真: 三樂編集部