三樂文庫
derek jarman’s garden with photographs by howard sooly
2023.02.08
ふと図書館で手に取った本。
新鮮な視点からのコテージの庭の写真が興味をそそる。
冒頭の解説より…
「パラダイスは庭に宿る。そして私の庭に宿る」とデレク・ジャーマンは書いている。
ジャーマンは映画づくりの天才であり、もっぱら性と暴力を扱った彼の作品は
決まって議論と非難を呼んだ、というのが、おおやけに定着した彼のイメージである。
しかし、私生活での彼は、天国よりも地獄と思われるような環境−−英国ケント州ダンジェネスの
原子力発電所に面した平坦で荒涼とした、いうなれば石くれの無人の原野に、
自分の庭園天国を築いた人であった。子供のころから庭づくりを愛した彼は、
画家の目と、ダンジェネスのフリント、貝、流木、石、古道具、拾い集めた廃品で造形した彫刻、
この地の原生植物、ジャーマン自身が移植した草花を組み合わせて、ひとつの風景をつくりあげたのだった。
この本は、1986年初めから彼が死を迎える年まで、庭がどのようにつくられていったかを
デレク・ジャーマン自身が記録したものである。
彼の友人で写真家のハワード・スーリーが1991年以来撮り続けた150枚余りの写真が、
庭の発展段階と四季折々の姿を子細にとらえている。
あらゆるアングルから撮った写真が、庭の幾何学的な構図と呪術的なストーン・サークル、
そして美しくも奇妙な彫刻を、まざまざとみせてくれる。
私たちはまた、ダンジェネスを歩き、草取りをし、水をやり、あるいは
生きていることを喜ぶジャーマンの生活を垣間見るのである。
『デレク・ジャーマンの庭』はジャーマンの最後の本となった。
この本は、彼の庭同様、多くの人に愛された輝かしい芸術家にふさわしい記念碑である。
彼は、あらゆる不利な条件のもとで、これ以上ない荒涼の地に息をのむほど美しい庭をつくった。
その記録は、造園を実践する人や、ひとりの傑出した人物をこよなく愛した人々に、強く語りかけていくことだろう。
とある。
- 三樂文庫No:098
- 著者:デレク・ジャーマン 写真/ハワード・スーリー
- 出版社:光琳社出版
- 発行日:1997年11月1日
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文章・写真: 三樂編集部