三樂文庫
人間と宗教 あるいは日本人の心の基軸
2023.08.29
日本橋三越劇場で開催された「薬師寺まほろば塾」の講演を聴いてきました。
塾長の加藤朝胤先生の法話「唯識について」
そして、講師寺島実郎氏の「人間と宗教ー日本人の心の基軸」という演題であり、
書籍のタイトルでした。
書籍名の
人間
宗教
日本人
心
について歴史的変遷、体系的に書かれ、私のような浅学菲才な者にも知り得た事が多くありました。
新型コロナウイルスのパンデミックが起き、ロシアがウクライナを侵攻し、戦争を始めてしまう。
そのような歴史的な今を生きる私たちにとって、主観的な思考を重層させることの大切さも感じました。
筆者の言葉を借りて、(p.269)
おそらく私自身は無宗教者ということになるのであろうが、無宗教者の宗教性を大切にしたいと
思う。たとえ特定の宗教・宗派を信心せずとも、神や仏の気配を感じること、何か大きな意思が自
分を見つめているという意識は、人間が生きる上で重要である。私が触れ合った世界の優れた宗教
者に共通する空気は、他者の苦痛への共感を通じた静かな利他愛であった。
(中略)
故郷の自然と同化した氏神様への崇敬ともいうべき神社神道、伝来した仏教の上に日本独自の創造
的仏教を拓いた空海、親鸞、日蓮などの仏教的思潮、論語などの素読により染み込んだ儒教的規範
性、こうしたものが相関して重層的に心に堆積し、日本人の精神性の深層底流を形成している。
戦後日本社会で宗教性は希薄化したが、パンデミックの試練を体験する中、レジリエンスを取り戻す
臨界点において神仏の大きな意思が見つめている気配を感じ、宗教に心を動かす人が増えているとい
えよう。宗教の進化が問われる時代なのである。
- 三樂文庫No:118
- 著者:寺島実郎
- 出版社:岩波書店
- 発行日:2021年11月26日
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文章・写真: 三樂編集部